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評 沖縄で/写真は(2) 中川大祐「真栄原社交街×2002」

 明るい陽射しに照らされ、その姿をあらわにする、街並みのファサード。そこには陰影や深みといったものもなく、ただただ渇いた状態で、自らの容貌を白日の下にさらしている。
 この一群の写真に付されたタイトルは、「真栄原社交街」。「新町」とも呼ばれた、宜野湾市の同地区に所在した、いわゆる風俗街であるが、数年前からの、警察や行政の浄化運動によって、今では店舗の看板も取り払われている。中川が写真に収めた、店舗名を記す看板がいまだ建物を飾っている様子は、浄化運動が完遂に向かう直前の姿であるという。ゆえに、この光景を今日目にしようと望んだとしても、同じ様子に立ち会うことは、もはや不可能になっている。たかだか2、3年前の姿であるにもかかわらず、決定的に過ぎ去ってしまった光景。
 ここには、過ぎ去った光景が写真によって刻みこまれている。風俗街の浄化は、社会の風紀という側面や、性の売買春が再生産される環境を断つという点では、望ましいことである。ましてや、例えば真栄原社交街のような、権力の非対称性が顕在化する、戦後占領下の社会体制が生み出した負の場所に対しては、速やかに消去すべき過去の負債であると考えるのも不自然ではない。けれども、この確かに存在したという事実を、「なかったこと」にするべきではないし、また、できることではない。もし、「なかったこと」にするならば、我々人間の健忘症は、過去から何も学ぶことも、教訓にすることもない。忘れないこととは、我々の歴史に対する責任と倫理である。
 中川がこの風俗街に向けるまなざしは、あくまで街の表皮にとどまる。内奥へと踏み込まないのは、この写真家の節度であると言うべきであろう。写真家は、人の姿が写りこまない、白日の下の、建物の外観にとどまることで、善悪や好悪の判断もなく、観測者として振る舞うことを選択する。そこで獲得されるものは、逃げ去りゆく街の記憶に対する、歴史家とも呼べる視点である。

『沖縄タイムス』2012年9月28日
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by rnfrst | 2012-09-29 12:25

『沖縄タイムス』2012年9月28日 「評 沖縄で/写真は(2) 中川大祐「真栄原社交街×2002」」

『沖縄タイムス』の本日付の記事として、表題の短文を寄稿しました。これは、沖縄市のギャラリーM&Aで開催されている連続写真展のうちひとつの展覧会に対する、展覧会評という位置づけのものです。展覧会のURLは以下。
http://www.okinawa-shashin.com/
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by rnfrst | 2012-09-28 08:00

連続講座 ワークショップ「沖縄を撮る」

下記の写真ワークショップの講師を担当します。
念のため申しておくと、私は全回を担当するわけではありません(つまり、担当しない回もある)ので、ご注意ください。
ご興味ある方は、ご参加を。

復帰40年の軌跡 時の眼―沖縄
比嘉豊光・山城博明写真展(9.26~10.22)
関連企画

連続講座 ワークショップ「沖縄を撮る」
受講者募集中

◎日時(連続・全4回)
第1回 9月30日(日)
第2回 10月7日(日)
第3回 10月14日(日)
第4回 10月20日(土)
※各回共通15:00~17:00

◎講師
比嘉豊光(写真家)
土屋誠一(批評家)

◎受講料無料(ただし入館料700円×4回分=2800円が必要になります)
 ※佐喜眞美術館友の会会員の方は無料(年会費3000円)
◎定員=最大10名(申込数が定員を超えた場合は選考となります)

問い合わせ・申し込み 佐喜眞美術館
宜野湾市上原358 TEL 098-893-5737 Eメール info@sakima.jp
http://sakima.jp/?p=669
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by rnfrst | 2012-09-07 20:43