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『現代思想』2013年5月臨時増刊号「総特集 東松照明 戦後日本マンダラ」

『現代思想』の東松照明特集号に、「「時」のモンタージュ 東松照明論」という論考を寄稿しました。
この号の詳細は以下をご参照ください。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791712618
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by rnfrst | 2013-04-12 21:49

美術月評〈3月〉

 このところ個展を立て続けに開催している彫刻家による、「河原圭佑個展『鉄のかたち・おきなわシリーズⅣ』」(那覇市民ギャラリー、19日~24日)が目をひいた。鉄を素材にしたその作品は、決して新しい試みではないものの、彫刻の自立、形態の操作といった、近代彫刻の古典的とも言える取り組みを行っている点は興味深い。河原の作品は、有機的な形態を持っている点は一貫しているが、最近作では、一見して構造が把握できないような、入り組んだ構成がなされた形態が探求されているようであり、その把握のし難さゆえに、空間へのボリュームの展開のみならず、時間の継起を観者の鑑賞体験として促すことに成功している。逆に、あからさまに沖縄の風物をモチーフとした作品は、作品の指示対象が明示的すぎるために、オブジェ以上でも以下でもない、ローカルなモチーフに寄り掛かった、置きものめいた表現でしかないように見える。モチーフに依存すればするほど、鉄という素材にもたれ掛かったフェティッシュにしか過ぎなくなるのは自明である。ならば、河原が進むべき表現は、モチーフや素材を先行する所与の条件として扱うことではなく、構造の操作によって継起的に実現される形態のほうであるのは明らかである。
 児玉美咲による個展「Hail to each other」(県立博物館・美術館県民ギャラリー、19日~24日)は、絵画をベースとしたこの美術家が志向する関心を明らかにしていた。その関心とは、恐らく「透明性」ということに尽きる。実際、天井から吊るされた透過する布素材に下から照明を当てたインスタレーションや、光源が仕込まれた3色のミニマルなライトボックスの作品など、文字通りの透明性が提示されていた。同時に展示されていた、薄塗りの淡い色彩による抽象絵画も、絵画による透明性が目指されていたのであろう。しかし、この個展で解決できていなかった課題は、「文字通りの透明性」と「現象的な透明性」という、対極にあるふたつの透明性の区別が、児玉自身において明確に区分できていなかったということではないだろうか。例えば絵画においては、モーリス・ルイスやヘレン・フランケンサーラーといった戦後美術の巨匠たちは、現象的な透明性をいかにして絵画において実現するのかということに腐心した画家たちであった。現象的な透明性とは、文字通りの透明性とは異なり、不透明な素材を用いつつも、平面上への色彩の配置の効果によって、感覚において把握されるようなそれのことである。そのような系譜上に児玉の作品を置くとすると、絵画において探求されるべき透明性の問題解決は棚上げされ、インスタレーションやライトボックスのような文字通りの透明性によって、うやむやにされていたように見える。児玉の作品が明らかに平面を志向している以上、タブロー上での現象的な透明性の探求へと向かうべきではないだろうか。
 キャリアのある作家の展覧会として、「宮城明展 表皮一体 アイデンティティーの探究」(沖縄科学技術大学院大学キャンパス内スカイウォーク、2月25日~5月10日)は、さまざまな素材を使用しつつも一貫して「表面」にこだわっている点については、表現形式を完全に確立していると言っていいだろう。つぶす、たたく、刻むなど、徹底して「表面」に対して攻撃を加えるという荒々しい手法には、宮城の確かなオリジナリティがある。その攻撃性はまた、ある程度、沖縄のネガティヴな現状を反映した表現手法であるだろう。充実した個展ではあったのは認めざるを得ないが、一方、宮城の特徴が、いささかルーティンに陥ってきているように見えたのも、また正直なところである。反復によって強度を増すのか、あるいは、新たな展開を模索すべきなのか、ここで性急に判断すべきではないだろう。宮城の表現が今後どこへ向かうのか、注視していきたい。
 評者が企画責任者なので、手前みそではあるが、「堀浩哉パフォーマンス・ワークショップ&講演会 in 沖縄」(3月25日~28日)のワークショップ(県立芸術大学体育館)には一言触れておきたい。短い期間のワークショップのため、最終日になされた集団パフォーマンスの成果発表会は、「作品」とは言い難い完成度ではあった。しかし、自己と他者、自由と制限など、芸術表現に関わる基本的なメソッドを、身体表現によって学ぶという点においては、ワークショップの参加者には得るところが多かったように思われる。今回の沖縄への招聘によって、堀と沖縄との接点ができたのも、大きな成果だ。これを機に、新たな表現者が出現すること、また、来るべき折に堀の作品が沖縄で展開されることも期待したい。
 歴史研究的な展覧会としては「切った貼ったで盛り上がれ!漆の技 TSUIKIN」(浦添市美術館、2月22日~3月17日)が、キャッチーな展覧会タイトルとは裏腹に、シリアスに堆錦技法の変遷を追うという、非常に丁寧な展覧会であった。美術館の特色を最大限に生かしたこのような展覧会は、公立美術館のミッションを的確に遂行しているという点では、とても好ましい。このような真摯な展覧会が、沖縄だけではなく、広く県外の美術工芸の研究者にも注目されてほしいと願うものである。

『沖縄タイムス』2013年4月5日
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by rnfrst | 2013-04-06 23:34

『沖縄タイムス』2013年4月5日 「美術月評〈3月〉」

『沖縄タイムス』の本日付の記事として、「美術月評」を寄稿しました。
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by rnfrst | 2013-04-05 09:47