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展評 丹治莉恵個展 ZONE

 端的に言えば、ミニマルアートの彫刻か。そんなふうに、簡単に片づけることもできなくはないだろうが、作品はより繊細に読まなければならない。実際、丹治の作品には、さまざまな「読み」を誘発させるような仕掛けが施されている。
 まず、会場に入った際の印象は、一般的な身長のサイズを優に越える、比較的大きな漆黒の物体が醸し出す威圧感だ。どの作品もシンプルな形態を持っており、あたかもリチャード・セラの作品がそうであるような、心理的な威圧感と重量感を感じさせる。しかし、作品の裏側に回ってみると、形態を保持している石こうが、むき出しの状態になっていることがわかる。石こうは、鉄や鉛に比べれば、ずっと軽い素材である。丹治は、石こうで型取りした形態の、つるつるの表面のほうには、重量を感じさせる黒鉛を面全体に染み込ませるように擦り付け、裏面は生の石こうをそのままの状態にしているのである。
 心理的な威圧感と重量感を与える表面に比して、むき出しの白の裏面は、表面のそのような感覚は実は偽の幻影であって、物体としては実際には「ハリボテ」であるということを示している。いや、情報化の加速する時代に生きる私たちにとっては、物理的な重量のほうが遠いものであって、むしろ「ハリボテ」の世界にいるのかもしれない。
 ところで、丹治が提示する物体のタイトルには、「coner(角)」、「partition(仕切り)」、「pole(柱)」といった名前が与えられており、それぞれ文字通りの形態を持っている。これらは、「角」であれば面と面が重なり合う部分、「仕切り」であれば壁、「柱」は床と床とを支えるもの、といったように、つまりは建物(四角い箱、ということになるが)を成立させる最小限の条件がバラバラに示されている。
 ここからも理解できるように、丹治がこれらの建物の諸部分によって示そうとしているのは、バラバラの「ハリボテ」として建築物である。
 丹治が示すのは、両義性である。重いけれども軽い、建物だけれども建物ではない、本物だけれど偽物でもある、といったように。物事の本質と、われわれの思い込みを、文字通り物体の表と裏で表そうという試みであると考えたほうがいい。
 しかし私たちは、どちらが「本質」でどちらが「思い込み」であると、明確に判断することはできるだろうか。私たちの知識の分量が増えれば増えるだけ、あるいは、さまざまな情報に触れれば触れるだけ、一体何が本質で、何が思い込みなのかの区別が難しくなる。今日においては、明快な「正しい」答えなどはどこにもない。丹治は、明快な物体を提示することによって、私たちの不明快さを明らかにするのである。
 ところで、作者は次のような記述を嫌がるであろうが、丹治が福島を故郷に持ち、沖縄に在住するアーティストであることと、このような作品を制作することとは無関係ではないと思われる。福島も沖縄も、困難な「ZONE(地帯)」であることを考えれば、そのような場から立ち上げられる作品=思考であるに他ならないからだ。

『琉球新報』2015年3月26日
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by rnfrst | 2015-03-27 08:21

「展評 丹治莉恵個展 ZONE」『琉球新報』2015年3月26日

『琉球新報』の本日付の記事として、表題のテキストを寄稿しました。
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by rnfrst | 2015-03-26 13:25

「「不自由」から構築へ向けて 「表現の不自由展」」『美術手帖』2015年4月号

『美術手帖』に、表題のテキストを寄稿しました。
ぜひご覧ください。

http://www.bijutsu.co.jp/bt/
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by rnfrst | 2015-03-25 18:18

『『美少女戦士セーラームーン』研究論集』刊行

表題の論集が刊行されました。
私は、「女同士の絆 『美少女戦士セーラームーン』論」という論考を寄せています。
書誌情報は以下のとおりです。

少女マンガの表象研究会編『『美少女戦士セーラームーン』研究論集 少女マンガの表象研究会研究報告書』少女マンガの表象研究会、2015年

これは、私の本務校の学生や卒業生たち(セーラームーン世代!)が主体となって刊行にこぎつけた論集で、オッサンの私は若い研究者たちに「俺も書かせて!」と混ぜてもらったというものです。
拙論はともあれ、全体として結構高いクオリティになっておりますので、ぜひ多くの方々にお読みいただきたいと思います。
なお、この論集は研究助成に基づく出版物のため販売は行っておりません。
プロや研究者の方々には無料でお送り差し上げますので、ご希望の方はメールなど何らかの方法で私にご連絡いただければ、可能な限り手配させていただくようにいたします。

https://tsukiken0412.wix.com/tsukiken
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by rnfrst | 2015-03-23 09:46

青野文昭×土屋誠一×関本欣哉トークショー「「はじ」からみる 美術のこれから」

下記のトークイヴェントに登壇します。
震災を挟んで、久々の仙台です。
ぜひお越しください。
なお、このトークイヴェントは青野文昭さんの個展の関連イヴェントですので、青野さんの個展のほうもぜひ!

青野文昭(美術家)×土屋誠一(美術批評家)×関本欣哉(TURNAROUND代表)トークショー
「「はじ」からみる 美術のこれから」
2015年4月11日[土]6:00pm-8:00pm
入場¥500 要予約 定員30名
ご予約はメール又は℡にて
info@turn-around.jp、022-398-6413

『青野文昭 個展 2015』
□会期
2015年4月9日[木]-4月26日[日]
開廊時間|11:00am-8:00pm、日曜-6:00pm、最終日-5:00pm、
月曜定休 [入場無料]
□会場
Gallery TURNAROUND
仙台市青葉区大手町6-22久光ビル1F
022-398-6413
info@turn-around.jp

http://turn-around.jp/sb/sb.cgi?eid=430

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by rnfrst | 2015-03-22 16:51

『福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点 平成26年度那覇市文化芸術ふれあい事業』刊行

先の2月3日から8日にかけて、那覇市民ギャラリーで開催された福沢一郎展のカタログが刊行されました。
私は、「人間存在の純粋性に向けて 福沢一郎「日本人はどこからきたか」及び「日本文化のあけぼの」連作について」というテキストを寄稿しています。
本カタログの書誌情報は以下のとおりです。

『福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点 平成26年度那覇市文化芸術ふれあい事業』那覇市市民文化部文化振興課、2015年

なお、このカタログは一般販売はされないようですので、どうしても欲しいという方は、那覇市の文化振興課に研究目的で、などと理由を言って問い合わせてみてください。
ゲットできるかどうかは保証の限りではありませんが……。
一応、那覇市の文化振興課のURLを貼っておきます。

http://www.city.naha.okinawa.jp/kakuka/bunka/
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by rnfrst | 2015-03-17 09:34

美少女戦士セーラームーン研究報告会

表題の研究報告会に登壇します。
これは、本務校の学生や卒業生たちが行っている研究会にオッサン(←私)も混ぜてもらって、一緒に行うものです。
この研究の研究論集も報告会の際には配布できるはずですので、ぜひご来場ください。
私はついつい出しゃばって喋り過ぎてしまうので、あんまり喋らないように注意します(笑)。

「美少女戦士セーラームーン研究報告会」
大城さゆり・加藤志帆・平良優季・土屋誠一・寺田健人・比嘉楓・松井貴子

日時:2015年3月21日(土) 18:00-20:00
場所:沖縄県立芸術大学首里当蔵キャンパス一般教育棟101教室
主催:少女マンガの表象研究会 tsukiken0412@gmail.com
後援:公益財団法人沖縄県立芸術大学芸術振興財団助成事業
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by rnfrst | 2015-03-07 09:49

「表現の自由と警察介入」共同通信社配信

表題の記事が配信されました。
私は執筆者ではなく、共同通信社さんによる記事の中で、取材を受け、コメントが使用されています。
掲載誌によっては、表題のタイトルではないかもしれませんが。
ともあれ、既に掲載されている地方紙もあると思いますが、お目にとまったらご覧いただければ!
良記事です!!
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by rnfrst | 2015-03-06 09:06

浅野春男教授 退任記念最終講義

同僚の浅野春男先生が、定年で本年度をもって退任されます。
浅野先生が研究者人生において注力してきたセザンヌ研究の集大成になると思われます。
ぜひご来場ください!

本学開学以降、長年にわたり教鞭をとり、セザンヌ研究に邁進されてきた、浅野春男教授が今年度をもって、定年退任されます。先生の益々のご活躍を祈念して、浅野春男先生の最終講義と懇親会を下記の通り、開催する運びとなりました。
多くのみなさまのご来聴とご参加をお待ちしております。

最終講義
「セザンヌ藝術の真実」
日時:平成27年3月7日(土) 16:00〜17:30
場所:沖縄県立芸術大学 首里当蔵キャンパス(旧第一キャンパス) 一般教育棟3階 大講義室
入場無料、聴講歓迎

問い合わせ先
沖縄県立芸術大学芸術学専攻学科室
〒903-0806 沖縄県那覇市首里当蔵1-4
Tel&Fax 098-882-5070/E-mail geijutsu(at)okigei.ac.jp
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by rnfrst | 2015-03-05 19:20

「キャラクターたちは、3.11を見ていたか?」

下記のトークイヴェントに登壇します。
よろしければお越しください。

※【3月13日追記】会場が変更になりました。時間も18時で終了なのかどうか、私は主催者じゃないのでわかりません。詳細は主催者のはるしにゃん氏にお問い合わせください。

「キャラクターたちは、3.11を見ていたか?」
登壇者
美術家 黒瀬陽平
批評家 村上裕一
美術批評家 土屋誠一

2015/03/15 (日) 15:00-18:00
会場 高円寺グリーンアップル ゲンロンカフェ(会場が変わりました)

http://peatix.com/event/76221/view

http://hallucinyan.hatenablog.com/entry/2015/03/13/010828
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by rnfrst | 2015-03-03 07:03