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「堀浩哉パフォーマンス・ワークショップに寄せて」

 沖縄県立芸術大学芸術振興財団の教育研究助成に基づき、美術家の堀浩哉氏を招いてのパフォーマンス・ワークショップと講演会を企画することとなった。堀氏は、1947年生まれの、既にベテランと言っていい世代に属する美術家だが、絵画を中心に、パフォーマンスやその他さまざまな表現媒体を使用した作品を精力的に発表し、国内外での評価も高い。また、戦後日本美術において、いわゆる全共闘世代をくぐり抜けた人物でもあり、著名な「もの派」の世代に後続する現代美術のムーヴメントであった「美共闘」のメンバーの一人として著名である。既に美術の歴史にその名前を刻む一方、今日なお現役の美術家としての活動を継続している稀有な人物の一人が、堀氏であるということだ。
 一方、堀氏は優れた教育者でもある。多摩美術大学の教授として教鞭を執り、国内にいる若手や中堅のアーティストから尊敬を集める一方、少なからぬ有力なアーティストを輩出している。中央のアートシーンにおいて、堀氏の名を知らぬ者は、ほとんどいないといっていいほど、美術家としても、教育者としても、その存在感を発揮している。
 今回のパフォーマンス・ワークショップは、堀氏が多摩美大において授業科目として長年にわたって継続している、将来の美術家になる卵たちのためのワークショップのメソッドを、4日間に凝縮して提供するというものである。あくまで美術のジャンルにおけるワークショップであるので、例えばダンスのような身体表現の基礎が必要なわけではなく、今回は、高校生以上であれば誰でも参加できることとした。とはいえ、自らの身体を使用した美術作品の可能性を考えるきっかけになるという点では、極めて貴重な機会になるはずだ。現代美術の先端的な表現に、身をもって体験したいという方には、ぜひワークショップに参加をしていただきたい。
 また、この4日間ワークショップは、最終日に成果発表会を設ける。ワークショップ自体には参加せずとも、どのような表現が組み立てられたのかということだけでも、ぜひ目撃していただきたい。さらに、期間中に、沖縄県立博物館・美術館を舞台にして、堀氏自身による講演会も予定している。こちらは、堀氏の芸術思想に触れる機会になるだろう。この一連の催しをきっかけとして、現代美術への見聞を広めるとともに、沖縄からのより多くの未来のアーティストの出現に期待するものである。

『琉球新報』2013年3月13日
by rnfrst | 2013-03-14 19:23
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