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「カタログ刊行の課題」

 県内の多くの博物館や美術の展覧会において、カタログ刊行の遅延が目立っている。極めて問題だ。なぜか。社会教育機関でもある博物館や美術館は、原則的にあらゆる人々に開かれているべきだ。もし仮に、県外に在住する沖縄の美術に熱心な愛好者が、展覧会の開会直後に来訪し、カタログが必然的な理由もなく、刊行が遅延していると知らされたとしたら、どれほど落胆するだろうか。
 県内各地の展覧会を鑑賞する中で、かねてより気に掛けていたが、改善どころか次第に悪化してきているので、さすがに看過できなくなった。
 開催中の展覧会では、那覇市立壺屋焼物博物館での「現代沖縄陶芸の歩み」展がそうであったが、展覧会会期がスタートしているのにもかかわらず、カタログが刊行されていない。そもそもカタログを作成しないならばまだしも、製作予定であるという。
 カタログの刊行は、会期が終ってしまえば霧散してしまう展覧会を、書籍の形で残すための、大切 な研究成果物である。
県立博物館・美術館で開催中の「大嶺政寛」展も、カタログの発行部数が極めて少量と展覧会関係者に聞いた。それでは熱心な美術関係者が入手したら、一般の愛好者は手にすることができなくなってしまう。このような事例は早急に解決されるべき課題だ。
 私は何も、沖縄県内部の博物館運営を、本土水準に合わせろと言いたいわけではないし、沖縄に所在する博物館として矜持を持てばいいと思う。しかし、それは内容で勝負すべきことであり、カタログ刊行の遅延や、発行部数の極端な少なさといったことではないだろう。率直に言って、あまりにもホスピタリティに欠けると言わざるを得ない。
 今回このような文をあえて記したが、同じような事例は沖縄県内の他の博物館でも、しばしば目にすることだ。このような非本質的なことに苦言を呈せざるを得ない状況は、これが最初で最後であってほしいと願うものである。
 現在の状況が、今後も続くようであるならば、沖縄の美術界それ自体が、沖縄の外の人びとから見捨てられることにもなり得ないかと、危機感を感じざるを得ないのだ。

『沖縄タイムス』2015年12月18日
by rnfrst | 2015-12-20 08:22
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