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rainforest

stsuchiya.exblog.jp

2016年 02月 26日 ( 1 )

「「芸大の御宝展」あすから」

 2016年度、つまり今年の4月から来年の3月までの1年間は、沖縄県立芸術大学のメモリアルイヤーである。本学は、開学して30周年を迎え、その記念すべき年度において、各種のイヴェントを準備しているところである。そのプレイヴェントとして、沖縄県立博物館・美術館と協同しての、「芸大の御宝展」が開催される。
 個人的な感慨を言えば、首里城の麓に主たるキャンパスを抱える本学に赴任して、私自身ちょうど7年目を終えようとしている。この絶好のロケーションを舞台として、教育と研究に希望を燃やし、その灯は今でも消えてはいない。たかが7年間かもしれないが、大都会の郊外に育った私としては、このシマで空回りをし、生まれながらの口の悪さ(批評家と名乗っている以上、そういう役割だと思ってもいる)で、県立芸大のうるさい奴と思われてもいるだろうけれども、私なりに沖縄を愛し、県立芸大を愛し、自分のなすべき文筆活動を継続し、後進を育て、とにかくこの大学が他の芸術系大学に負けない、誇りある大学であることをさらに高めようと思い続けてきた。
 しかし、教育者として大きな責任を負うことでわかったのは、一人の人材を、いっぱしの表現に関わる人間として育てるのには、少なくとも10年はかかる、という、目がくらむほどの予想より長いスパンが見えてきたということである。昨今の世の中では、短期的な数値目標で測られがちであるけれども、芸術の教育や研究というものは、長い年月の積み重ねによって、成立するものだ。例えば、若い表現者が出現したとして、20歳代にはチヤホヤされても、飽きられればその人物の音沙汰も聞かなくなるなどということはよくあることで、矢継ぎ早に話題を提供しては消費されるような仕組みと、芸術とは、極めて相性が悪い。過去の偉大な芸術家たちが皆そうであったように、長い人生の積み重ねと、数々の芸術家たちが長い時間のなかで脈々と歴史を綴ってきたことが、端的にそのことを証明しているだろう。
 そういう意味においては、県立芸大は30歳なわけで、誕生から20代の青年期を経て、ようやく大人としての実感をつかんだところなのだろう。とはいえ、その30年の年月には、30年なりの蓄積があり、沖縄の伝統芸術からはじまり、本学から発信された新しい芸術作品に至るまで、貴重な文化財として収蔵されており、加えて、本学の教員もまた、現役の表現者である「生きた文化」である。この展覧会では、美術工芸と音楽というふたつの軸をもつ芸術の、本学が抱える豊かな資源を、広く様々な方々にお目にかける機会として目論まれている。沖縄が世界に対して誇ることのできる大学であることを認識していただくことを望むとともに、皆様から忌憚なきご意見を頂戴しつつ、31年目からのさらなる向上を目指すための糧としたいと思う。会期中には、ここに書ききれないほどの関連イヴェントも多く開かれる。ぜひ、目撃していただきたい。

『沖縄タイムス』2016年2月25日
by rnfrst | 2016-02-26 21:06